ぼっけえ、きょうてえ/怖い絵/着物をめぐる物語/べっぴんぢごく
晴天だった。目の前に大きな赤い鳥居が見える。美術館から出て興奮した気持ちを抑え階段に座っていた。携帯電話が震えた。長い。メールじゃない。誰だ?親父からだ。まったくこんな所にまできて心配かよとも思ったが出てみるとそうではなかった。「みられたのか?」タイミングが良すぎて笑える。
娘はたった一枚の絵がみたくて京都に一人で来ていた。そしてそれはたった一冊の本がきっかけだった。
他の書店でアルバイトをしていた頃、何か面白い本はないかと平台探索をしていた。そして一冊の本が目についた。岩井志麻子「ぼっけえきょうてい」だった。タイトルも気になったがその表紙の絵に強くひかれた。本も面白かったが(二番目の話がおすすめ)その絵は小説よりもいつまでも頭に残った。カバー折を見るとそこに「京都近代美術館所蔵」と書かれていた。
その時はそこまでだった。しばらくして友達と京都旅行の話があがった。
ふと思い出し、スケジュールに美術館行きを組み込んでもらった。
ドキドキしながら美術館でその絵を探した。しかし行けども行けどもその絵はなかった。
受付で尋ねてみた。すると自分の勘違いがわかった。「所蔵」とは飾っているわけではないのだ。美術館だって催事の為に沢山の品を所蔵しているのだ。ちょっと考えればわかること。「またきておくれやす」と言われた。ガクッ。またすぐこれる程近くにも住んでなければいつ展示されるかもわからない。思えばこんな事があったせいか逆にその絵がみたくて仕方なくなってしまっていた。それからしばらく時間がたった。
美術館のHPをのぞいていると常設展にその絵が飾られる日時が記載されたのだ。
この時ほどネットに感謝したことはない。その後の自分はびっくりするくらい行動的だった。そしてその絵がみられたのだ。
「で、どうだったんだ?」と親父に聞かれた。何を喋ったのか覚えていない。一人で来ていたのでまだ誰にも生の感想が言えてなかったので興奮していたような気がする。「よかったなぁ」とそのときは言われた。親父にしては随分ココロの広い受け答えだった。
しかし後で親父や友達も含め「どうして一枚の絵をみにとんでいっちゃうのかよくわからない」と言われたりもしたが。でも思えばもっと前からこの画家の絵にはひかれていたようだった。
「ぼっけぇ」以前に久世光彦「怖い絵」を読んでいた。そしてその画家の絵がとりあげられていた。
その本を読んでその絵を見たとき、あまりの気持ち悪さ、怖さに、本を閉じた。でも怖いものみたさというのはあった。こんな思いをしたのは子供の時以来だった。
そして「ぼっけえ」後からはもうその画家で本を買っている感じだった。
林真理子「着物をめぐる物語」、岩井志麻子のその後の発刊された本。当然画家の事が書いてある書籍も(絶版)。
さて今月、岩井志麻子の新刊が出た。久しぶりに表紙がその画家の絵が使われていた。台車の上で出会った時いろいろばぁっと思い出し心の中で笑ってしまった。
ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子/角川書店/1470/4048731947
角川ホラ-文庫/479/4043596014
怖い絵/久世光彦/文春文庫/693/4167581019
着物をめぐる物語/林真理子/新潮文庫/619/4101191190
女人讃歌―甲斐庄楠音の生涯/栗田勇/新潮社/絶版
べっぴんぢごく/岩井志麻子/新潮社/1575 /4104513032
大森店 河又美予
4月 18, 2006 本と親父と本屋の娘 | Permalink
コメント
甲斐庄楠音(かいのしょう ただおと)ですね。
かなり風変わりな人物だった様で、興味を持ちました・笑。
しかし、この記事も河又様だったとは・・・、知らないで読んだ
のですけど。
コメントを書き過ぎでしょうか?
少し、自粛しましょう・笑。
投稿: 猫楠 | 2006/05/04 0:52:52