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暮らしの眼鏡

Kurasi 「暮らしの手帖」の記事以外の花森安治の文章を初めて読んだ。イメージが違って見えた。今まで、やわらかいイメージがあったが、このエッセイは意外にべらんめぇで、たくましい。ちょっと意外。でもその戸惑いは嫌な感じでは決してない。わたしの例えはいつもわかりにくいと言われるのだけど、あえて例えれば、中学校の同級生の男子に夜祭で出くわし、ドキリとした感じ?アレ?あいつって、うちらと同じ組の?へぇ~とかって友達を言い合いながら内心、動揺したような。そんな感じの戸惑いです。
  それは中学のときに夢中になっていた伊丹十三のエッセイを読んでいたときに感じた魅力に似て、引っぱられるような力強さがあります。心惹かれます。それよりも、やや乱暴に大口開けて笑っていても許されそうな、おじいちゃんみたいなほどよい距離感があり、気楽でいられそうな気がして、そんな心地よさもあります。
  わたしも一度くらいは職場の花といわれてみたいのですが・・・そこはなかなか、素地というものもありまして、うまいこといかないものです。
でも、大好きな本。

花森安治/中央公論新社/700円/9784122049772

渋谷店 原田真弓

3月 20, 2008 だから、大好きな本 |

医学のたまご

Igaku あの『チーム・バチスタ』と舞台は同じ桜宮市の東城大学。おなじみのアクティヴ・フェーズとネガティヴ・フェーズがまた登場。そしてラストのインタビュー場面が山になる展開まで同じで、もしかしてこの作品は、作者自身による自作のパロディ?

主人公の曾根崎薫、14歳の中学二年生には、忍という双子の兄弟がいるのだが、両親の離婚で生き別れになっている、という伏線で物語は始まり、どうしてもケストナーの『ふたりのロッテ』を連想してしまい、一体いつ忍くんが登場し薫くんと入れ替わるのかと思いながら読んだのに、遂に登場せず。あとになって版元さんから続編が出ると聞きやっと納得。(よく読んだら、作者後書きにもまだまだ続くとありました)

医学専門月刊誌で連載されていたが、児童向けYAシリーズで発売された。が、講談社のYAシリーズよりも版型も大きく値段も千円を越えていて、なおかつ当店では文芸書と児童書の境の場所に並んでいる。青い鳥文庫の隣に並べられたら!版型が大きくて無理なのだ。夢水清志郎や都会トムのファンあたりに気づいてもらえれば、もっと小中学生に売れるだろうに、と思っていたら、はやみねかおるフリークの我家の小学生が「おもしろ~い!」と満面の笑みを浮かべながら読み始めた。やっぱり…!

海堂 尊/理論社/1,365円/9784652086209

池袋本店 山井洋子

3月 20, 2008 文芸 |

赤朽葉家の伝説

Aka ずいぶん久しぶりに東京へ行き、毎回思うことであるが人の多さに現実味を感じない。乗車率120%の電車で見知らぬ他人に囲まれて、息もできないほど苦しいという実感があるのに、どこかですべてが幻のようにも思えたりする。そんなことを考えているのは自分だけだろうかと、周りの人々を見回し、それぞれの人生や思考に思いを馳せ、想像してみる。どんな仕事をしてどんな暮らしをし、どんな目標を持ってどんなことを考えているのだろうか。なにがその人たちを、「その人」たらしめているのか。急ぐ人の流れにできるだけ沿いながら、そんなことばかり考えていた。

直木賞も受賞し、いま一番著名で注目されている作家の作品であり、本屋大賞ノミネート作品でもあるこの作品。千里眼である万葉、その娘とその孫の物語という紹介が一番わかりやすいのかもしれない。しかし私は、ある一家の、三代にわたる女性を描くことで、地方が包括する経済的、社会的な闇の側面を描き出したことに驚いた。あらゆる時代の象徴ともいえる背景を、その時代に生きながらも地方で生き続けることで恩恵よりも悪い影響を色濃く受ける地方という特色。中央よりも、景気に左右されすぎる地方。地域全体に漂う独特の閉塞感と密閉された人間関係。一度は都会に出て、夢破れて帰ってくる人、帰ってこない人、そしてずっと地方で暮らし続ける人。自分自身の選択、環境により否応なくもたらされた変化。ただの超能力やミステリーではなく、いまでは形骸化した「家」という単位に集う血縁・非血縁者がおりなす物語である。

どの時代においても、人に共通する変わらないものとは何か。地方で生きるからこそ考えるようになったこととは何か。いろんな視点で考える機会を与えてくれる作品でした。

桜庭一樹/東京創元社/1,785円/9784488023935

別府店 祐保博美

3月 4, 2008 文芸 |